難病患者が考える災害の備え 

非常時「自分の身は自分で守る」心構えも 弱者への配慮は不十分

 難病患者や障害者ら災害弱者への支援を考える上で、当事者の意見は貴重だ。本紙生活面で「わたし、ときどき患者」を連載中の池崎悠さん(25)=熊本市=が今月、熊本地震の被災体験を福岡市内で講演した。池崎さんが強調したのは、非常時には弱者への配慮が行き届かない現実。まずは「自分の身は自分で守るしかない」として、薬の備蓄方法など、日ごろの備えについて具体的に提言した。

 指定難病の慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を15歳で発症した池崎さん。原因は不明だが、感染やストレスなどが引き金となって手や足が動かしにくくなる病気とされる。

 本震は「家が倒れるかと思うほどの揺れ」。前震と同様、近くの大学に歩いて逃れた。避難者は約760人。開放された構内の床は土足。枕のすぐ近くに靴があった。「自分も感染には弱い。病気だと誰に言えばいいのか。でも伝えて何か変わるのか…」。無力感を覚えた。廊下にも人があふれ運動場で一晩過ごした。

 翌朝、いったん帰宅。約60キロ離れた親戚宅で風呂に入れてもらい、また戻った。水や電気が使えず公園で1週間は車中泊。食事や水の配給情報は全く届かない。両親が約2キロ離れた公園に水をもらいに行った。結局、熊本県天草市の知人宅に5月上旬まで避難した。「障害者への合理的配慮など、まだまだ机上の空論」と痛感した。

   ◇    ◇

 池崎さんが訴えたのは、まず 薬や食料の備蓄 だ。薬は主治医に相談し、最低2週間分は持っておく。避難所で「頭が痛い」と訴えつつ、何の薬か分かっていなかった人もおり「服薬リストをスマートフォンで1枚撮っておけばいい」と提案。配給はおにぎりやパンなど炭水化物が多いため、ビタミン系のサプリメントもお薦めという。

 次に リラックスできる方法を持つ こと。前震後の避難所は学生が集まり、騒がしかった。耳栓のほか、マスクや「普段使うハンドクリームなどもその香りで落ち着ける」。日ごろから「自分なりにリラックスできる呼吸法を身に付けておく」のも良さそうだ。

  避難のシミュレーション も欠かせない。災害発生直後に数時間、身を守る公園などの「避難場所」、自宅で生活できない場合の「避難所」はどこか。被災していない遠くの場所(広域避難)も、移動方法を含めて「友人や親戚と事前に話しておく」必要がある。

  助けを求める先を複数確保する のも必要だ。自治会などが集める避難行動要支援者名簿に登録し、近隣住民と関わりを持っておくほか、患者会にも入っておきたい。最近は被災後、無料通信アプリのLINE(ライン)での支援情報なども活発だが「いつのものか分からないことも多い。行政からのネット情報などにアクセスすることに慣れておくこと」も不可欠だ。

 「必要な助けを気兼ねなく頼める友人を何人も持って。もちろん自分も求められる存在に」と池崎さん。「共助」の関係づくりの重要性も主張した。

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 講演会は福岡県難病相談・支援センターが主催。参加した約20人の患者や家族らからは「握力がなく電動車いす生活だが、バッテリーに限界があり、避難できるか不安」「難病も障害もさまざま。備蓄できる人、できない人がいる」とセーフティーネット(公助)を切望する声もあった。

 ただ地震などの災害は被害が広域にわたり、「個人や家庭による自助が7割、地域社会で助け合う共助が2割、自治体による公助は1割」(同県)とされる。

 池崎さんは「(今の社会や制度に)何がどう足りないのか、一緒にみんなで考えていけたら」と締めくくった。少しずつ、根気よく-。当事者が声を上げて発信し続けることが弱者支援につながると信じている。

 そうした声を「共助」「公助」の担い手がどう受け止め、手だてを考え、寄り添ってくれるのか。当事者たちは固唾(かたず)をのんで待っている。

福岡市内であった「難病の方のための家庭で取り組む防災対策」講演会

=2017/10/12付 西日本新聞朝刊=

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